食物繊維目的で青汁を購入する人たちがいるくらいなので、この成分は定番中の定番と言っていいでしょう。
食物繊維は腸内で消化吸収されることが無いので、過去においては専門家の間でも役に立たない物質として扱われていました。
ただしその健康に対する様々なメリットが明らかになり、現在では以下のように第6の栄養素として分類されています。

- 糖質
- 脂質
- タンパク質
- ビタミン
- ミネラル
- 食物繊維
そこで今回は食物繊維の概要や、あなたの健康に与える効果・効能などを分かりやすく説明していきます。
Contents
多くの日本人は食物繊維が足りていない
はじめに言ってしまうと、多くの日本人は食物繊維が足りていません。
以上は厚生労働省が目標とする一日当たりの食物繊維摂取量です。
年齢によって多少上下しますが全体平均の場合、男性は1日19g以上、女性は1日17g以上の摂取が推奨されています。
では実際の摂取状況はどうかというと、以下のようになります。
出典:厚生労働省 – 健康日本21(第二次)分析評価事業 食物繊維摂取量
全ての世代で推奨量に達していませんね。
総じて男性のほうが女性より多く摂取している状況ですが、これは単純に食事量に左右されているだけでしょう。
実は私たち日本人は過去においては多くの食物繊維を摂っていました。
日本人の平均食物繊維摂取量は、1950年代では一人あたり一日20gを超えていましたが、戦後の食生活の欧米化やライフスタイルの変化に伴い、年々低下しつつあるのが現状です。
出典:食物繊維の必要性と健康

食の欧米化とは、お肉の消費量が増加したことですね。残念ながらお肉は食物繊維を含みません。
食物繊維不足は最近の現象なんですね。
特に意識して摂っていないのであれば、あなたも不足している可能性が高いでしょう。
食物繊維は体内で消化されない炭水化物
意外と知らない人がいますが、食物繊維は炭水化物の一種です。
「炭水化物は糖質ではないのか」と思うかもしれません。それには「Yes」とも「No」とも答えることができます。
実は炭水化物は糖質と食物繊維の総称なのです。簡単に言ってしまうと「炭水化物 = 糖質 + 食物繊維」です。
この2つは以下のように分類ができます。
- 易消化性炭水化物:糖質
- 難消化性炭水化物:食物繊維
つまり糖質とは体内で消化されるタイプの炭水化物のことであり、食物繊維は消化されないタイプの炭水化物です。
食品のパッケージに記載されている成分表には炭水化物と記述されているケースが多いですが、食物繊維を表示している場合には糖質が同様の箇所に存在するはずです。
この「食物繊維は炭水化物」という点を理解していると、その正体が見えてきます。
食物繊維の正体は糖質が連結した物質

↑このような疑問が頭に浮かびませんか?
これにはちゃんとした理由があります。
まず糖質には大雑把に分けて単糖類、二糖類、多糖類などの種類に分けることができます。
※他に少糖類や三糖類などの分類も存在します
単糖類はひとつの分子で構成されており、これ以上分解することのできない糖質の最小単位です。

ブドウ糖や果糖がこれに該当します。
二糖類はこの単糖類をふたつ結合したものです。

スクロース(ショ糖)がその典型で、これはブドウ糖と果糖を結合した形になっています。
ちなみに私たちが砂糖として扱う物質がまさしくこのスクロースです。
多糖類は単糖類を複数結合したものです。
デンプン、セルロース、グリコーゲンなどがこれに該当します。
ここまでは前置きで、ここからが本題です。
糖質とは単糖もしくは単糖から構成される有機化合物のことです。
栄養学で言うのであれば狭義では上で挙げた易消化性炭水化物を指し、炭水化物から食物繊維を除いたものを意味します。
食物繊維は炭水化物のうち人が消化することのできない物質を指し、セルロースなどがそれに当たります。

「野菜は細胞壁に守られているので、栄養の吸収はあまり良くない」という話を耳にしたことがありませんか?
これは事実で、細胞壁は人の体内で消化吸収できないのでその内側に存在する野菜の栄養素を取り逃がしてしまうのです。
そしてこの細胞壁の主要構成物質こそがセルロースに他なりません。

セルロースは単糖類であるブドウ糖が複数連結した形をしています。
ちなみに例に挙げたデンプンとセルロースはともに多糖類に分類されますが、デンプンは糖質でありセルロースは食物繊維です。
違いは何か?その答えは極めて明快。
人はデンプンを加水分解する酵素(アミラーゼ)は持っていますが、セルロースを分解する酵素(セルラーゼ)は持ち合わせていないのです。
つまり消化することのできない糖質だからこそ食物繊維として指定されているのです。
仮にセルロースを体内で消化することができれば、それは糖質ということになります。
あくまでも体内酵素で分解できるかどうかという問題です。下で解説しますが、水溶性食物繊維は腸内細菌のエサとなり分解されます。
結局のところ炭水化物を糖質と食物繊維に分けているのは完全に人間の都合です。
このふたつの成分は元をたどると双方ともに単糖類で構成されているので、同じ炭水化物として扱われているのです。
ちなみにセルロースの消化能力がないのは、ある意味ラッキーだと思いませんか?
この多糖類は単糖類であるブドウ糖で構成されています。そしてこのブドウ糖こそが血糖値を上昇させたり、インスリンの働きで体脂肪へと変化するものです。
仮にセルロースを分解でき個々のブドウ糖が肝臓を通り血液中に流れ込んでいたら、人は野菜を食べるだけで肥満になっていたかもしれません。
あくまでも単純化した仮定の話ですが。。
水溶性と不溶性、2つの食物繊維の共通作用
食物繊維が人の健康に良いことは疑いありません。
実際に特定保健用食品(トクホ)で「おなかの調子を整える食品」として認められている成分の多くが食物繊維です。
この成分には大きく分けて以下の2つのタイプが存在します。
- 水溶性食物繊維
- 不溶性食物繊維
※上で挙げたセルロースは不溶性です
この2つは保水性や粘性の違いがあり、それぞれの働きが異なります。
ただし共通の作用もあります。
例えば繊維質というだけあって、口に含めた際にある程度噛む必要がでてきます。これにより唾液の分泌が促され、口臭や虫歯の予防に働きます。
また不溶性は水を吸収する能力に長けるので、お腹の中で膨張することにより満腹感を与えますが、水溶性も水に溶ける性質上ゲル状に変化することにより胃の中の内容物をゆっくり進ませ、結果としてこちらも満腹感をもたらします。
以下ではそれぞれの違いに焦点を当て説明をしていきます。
水溶性食物繊維の3つの健康効果
水溶性食物繊維といっても大麦β(ベータ)-グルカンや難消化性デキストリンなど複数存在します。
ただし大きな視野で見るとその働きは似ています。
例えば大麦β-グルカンの体内作用を図で示すと以下のようになります。
そこで水溶性食物繊維共通の働きを3つほどご紹介します。
血糖値の上昇を緩やかにする
水溶性とはその名のとおり、水に溶けるタイプです。
その過程でゲル状となり、糖質などを包むことによりそれらの吸収を穏やかにします。
結果として血糖値の上昇が緩やかになるので、インスリンの大量分泌が抑えられ体脂肪が付くことを抑えることができます。
血中コレステロール濃度を減少させる
水溶性食物繊維は悪玉コレステロール減少にも一役買います。
体内の脂肪を消化するには胆汁酸という物質が必要となりますが、一度その役目を果たすと小腸内で吸収されて肝臓へと戻っていきます。
水溶性食物繊維はこの胆汁酸を吸着し便として排出する働きがあるのです。

すると胆汁酸が不足した状態となり肝臓は新たに生成を試みるのですが、その際に悪玉コレステロールを材料として使用するのです。
結果として血中コレステロール濃度が減少していくという仕組みです。
また脂肪分の多い食事により分泌された胆汁酸が大腸へと流れ込むとそれが発がん性物質の元にもなるので、結果として大腸ガンを予防することにもつながります。
腸内環境を整える
水溶性食物繊維はビフィズス菌やバクテロイデス菌などの腸内善玉菌のエサとなります。
その過程で短鎖脂肪酸などの物質を作り出し、腸内が弱酸性に傾きます。
これは善玉菌にとっては居心地が良く、悪玉菌にとっては住みにくい環境なので、結果として善玉菌が増加をし腸内環境を整えます。
不溶性食物繊維の2つの健康効果
不溶性食物繊維にはセルロースの他にヘミセルロースやリグニンなどが存在します。
こちらは水溶性とは違い腸内細菌をもってしても分解できない性質を持つので、水溶性と体内での働きが異なります。
その健康効果を2つご紹介します。
排便を促す

不溶性食物繊維は保水性が高く、水分を取り込み腸内で膨張する性質があります。
そうすると腸壁が刺激されることにより腸のぜん動(伸縮)運動が活発化し、排便を促すことになります。
結果として便の腸内滞在時間が短縮するとともに排便回数が増えるなど、便秘対策にとても有効に働きます。
大腸ガンの予防
大腸ガンとは欧米のような高タンパク質、高脂質、低食物繊維の食生活で発症する病気です。
不溶性食物繊維の働きにより便の量が増すと腸内の発がん性物質の濃度が低下します。
さらに便の腸内滞在時間が短縮することで、発がん性物質が大腸に接触する時間が同様に短くなります。
これが大腸ガンの予防に働きます。
食物繊維のちょっとした注意点

食物繊維は人体に極めて安全な物質です。
ただしいくら問題が無いとはいえ、過剰に摂取することはオススメしません。
水溶性の摂りすぎは一時的にお腹を緩くするなど下痢の症状を招いてしまいます。不溶性は腸内で水分を吸収し膨張するので、摂りすぎはお腹が張ってしまう原因になります。
また食物繊維は有害物質を吸着する働きがありますが、その他微量のビタミン・ミネラルも回収する作用があります。
ビタミンは体内に貯蔵できない物質であり、ミネラルは体内で合成できない成分なので、両方ともに食事という形で取り込んであげる必要性があります。
せっかく摂ったそれら栄養素が吸収されることなくトイレで洗い流されるのはすごくもったいないですね。
その中には鉄分など女性が不足しやすいミネラルも含まれます。
ただし適度な量であれば水溶性食物繊維はカルシウムや鉄の吸収をむしろ向上することが知られているので、過敏になる必要はありません。
普段の食事で過剰になることはまずありませんが、難消化性デキストリン(水溶性食物繊維)などのサプリメントでは容易に大量摂取が可能です。
厚生労働省の定めでは男性は1日19g以上、女性は1日17g以上の摂取が推奨されていますが、すでに便秘に悩んでいる人たちは25-30g程度を目安に摂ることをオススメします。
ただしあくまでも目安なので、実際に摂ってみて自身の健康状態を見極め量を増減することが大切です。
一部で過激な「食物繊維信仰」が見受けられますが、用量は必ず守るようにしましょう。
食物繊維の摂取バランスは水溶性と不溶性で1:2が理想的

何事もバランスが大切ですね。
食物繊維は水溶性と不溶性で1:2が理想のバランスです。
不溶性は腸内で水分を吸収する働きがあるため、このタイプばかり摂取していると腸内が水不足のような状況に陥り、便がウサギのようなコロコロとしたものに変質してしまいます。
ただし実際問題として1:2のバランスを完璧に守り抜くというのも現実的ではないので、成分表で確認し不溶性が水溶性より多く含まれている程度の確認で十分でしょう。
また適度な水分補給も心がけましょう。
まとめ
食物繊維の概要をごく簡単に説明してみました。
この成分はあなたの健康を支える上で極めて重要ですが、食の欧米化によりその摂取量は昔と比較してずいぶんと減少してしまいました。
だからこそ、その大切さが説かれているという側面があります。
実際に青汁などの健康補助食品も食物繊維量を売りにしている製品が数多く存在します。
食物繊維そのものをサプリメントとして摂る場合はマルチビタミン・ミネラルなどを併用するケースがありますが、青汁はそれら成分も豊富に含むので別の製品を利用する必要性がないというメリットもあります。
青汁を飲むことでお通じが改善したなどという実体験は数多く存在するので、あなたも便秘で悩んでいる場合は一度試してみることをオススメします。