以下、遺伝子組み換え作物は「GMフード」とします。GM = Genetically Modified(遺伝子的に組み換えられた)。
「GMフードは本当に危険なのか」というテーマは2017年11月時点では結論が出ていない状態です。ただし危険性が完全に排除できないという理由から、有機JAS規格などではGMフードの使用は禁止されています。
青汁で利用される原料でも遺伝子組み換え技術は話題になることがあるので、気になるところですね。
ここでその安全性に対しての結論を出すことはできませんが、GMフードの概要と人の体に対して指摘されているその危険性を簡単に説明します。
※遺伝子組み換え技術は動物と植物の両方に適用できますが、ここでは植物に焦点を当てます
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遺伝子組み換えは自然界ではありえない神の領域に踏み込んだ手法

遺伝子組み換えは商用で扱われる植物や動物に対して遺伝子操作を行い、人為的にその性質を変化させてしまうという試みです。なぜそのようなことを行うのかと言うと、それは利益のためです。
植物は育てていく上で様々な難点がありますが、それを科学の力で解決してしまおうという話なのです。
よく行われる遺伝子組み換え操作には以下のようなものがあります。
- 除草剤に対する耐性を向上
- 害虫に対する耐性を向上
- 栄養価を向上
生産者側から見るとどれも魅力的ですね。収穫高が上がるので結果として野菜の価格も下がり、消費者に対してもメリットが発生します。
もともと人間にとって都合がいいように植物の遺伝子を変化させてしまうという試みは古代より行われていました。

例えばイチゴなども、実の大きな種ばかりを選び交配させるということを繰り返した結果、現在のように可食部が大きなタイプが出来上がったのです。ただしこれをもって遺伝子組み換えとは言いません。単なる「品種改良」です。
この手法は人為的とはいえ自然界のルールに収まる形で行われていたので、特に問題が提起されるものでもありませんでした。
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遺伝子組み換えの特徴は、特定の性質を種を越えて科学的に交配してしまうというところです。
つまり簡単に説明すると以下のような違いがあります。

遺伝子組み換え:種の壁を越えて特定の生物の望ましい遺伝子を別の生物に移す
遺伝子組み換え技術では植物の遺伝子を動物に移すことも可能です。つまり本来自然界ではありえないことを科学の力で無理やり達成しているのです。
行為そのものが非常に不自然であり、まさしく神の領域に踏み込んだ手法と言えるでしょう。よって品種改良などでは起きることのない予想外の展開へと発展する恐れが100%無いとは言い切れないところに問題点を感じる人たちがいるようです。
GMフードのメリット:特定の害虫を退治できる
GMフードを使用することで私たちが享受できるメリットには以下のようなものがあります。
- 特定の除草剤で枯れない
- 害虫に強い
- ウィルスに強い
- 特定の栄養素を多く含む
本当であれば聞くだけで嬉しくなるような事ばかりですね。「害虫に強い」という項目に焦点を当てると以下のような仕組みになります。
トウモロコシを食い荒らす「アワノメイガ」という害虫がいます。この虫は駆除が困難なことで知られており、その対策として用いられたのがBtタンパク質を遺伝子組み換え技術により組み込んだBtトウモロコシです。
アワノメイガなど特定の生物は体内の消化液がアルカリ性のためにBtタンパク質を消化することができず、消化管の受容体に結合してしまい細胞が内部から破壊され死んでしまいます。
それとは違い私たち哺乳類の消化液は酸性であり、Btタンパク質を他のタンパク質と同様アミノ酸レベルにまで分解ができるとともに、体内に受容体も存在しないので食べても全く問題がないのです。

実際にBtトウモロコシの導入により殺虫剤の使用量が3分の1以下に削減されるとともに、収穫量が増加したという報告があります。このように目に見える形で成果を挙げているというのが、遺伝子組み換え技術の賛同者の人たちの意見です。
GMフードは人体に有害なのか?「Yes」とも「No」とも言える
危険性が語られる際に一番のテーマとなるのが人体への悪影響でしょう。
「GMフードは人の体に有害なのか?」という問いには「Yes」という答えがよく返ってきます。
ショッキングな画像ですが、これはフランスの研究チームが実験用のマウスにGMフードをひたすら与え続けた結果を示すものです。大きな腫瘍が体に発生し内臓にもダメージを受けたとのことです。確かにこれだけを見るとGMフードが人体に対しても有害である気がしますね。
この研究でGMフードを与えること以外は何もしていないのであれば、それに原因があるとしか思えません。
ただしここでひとつの質問が浮かびます。
「マウスやモルモットに対して有害な物質は、人に対しても100%有害なのか?」という疑問です。
過去においてダイオキシン論争が非常に熱を帯びましたが、現状の専門家たちの間では「人体への有害性は低い」という方向で収まりつつあります。ダイオキシンは無害ではありません。「有毒性が低い」と言ったほうが正確です。
短期的な被害では、にきびの原因になることが分かっています。ただし純粋にダイオキシンで死に至ったと思われる患者は未だかつて存在しません。ただし他の動物では状況が違います。

モルモットに関してはダイオキシンが青酸ナトリウムの6万4000倍の毒性を持つという実験値が得られています。
つまり特定の動物に対しては有毒性が極めて高いのです。
ではGMフードはどうなのでしょうか。
遺伝子組み換え技術の活用が極めて活発に行われているアメリカにおいては、GMフードの利用が慢性疾患の増加と重なるという報告がすでに挙がってきています。
ここに興味深いデータが存在します。
出典:Steep Rise in Chronic Disease in US Parallels GMOs in Our Food
以上の画像はGMトウモロコシとGM大豆(黒線)の流通と肝臓ガン(黄色の棒グラフ)の増加を表したグラフです。これら食品が流通するようになってから肝臓ガンを患う人たちの数が急増しているのが分かります。
これは恐ろしいですね。。
ただしひとつだけ指摘しておかなければいけないのは、表からも分かるように肝臓ガンの患者数自体はGMフードが流通する前から上昇トレンドだったということです。もしかしたら別の要因があるのかもしれませんが、GMフード流通後にそのトレンドが急上昇しているのも事実です。
GMフードは危険性が立証されていないので禁止されない
GMフードが全面禁止にならない理由は、それの利用と健康被害の相関関係を示す決定的な証拠が見つかっていないからです。
厚生労働省では以下の点を基準にチェック体制を整えており、少なからず「日本国内に流通しているGMフード関しては安全」だとしています。
- 組み込む前の作物(既存の食品)、組み込む遺伝子、ベクター(遺伝子の運び屋)などはよく解明されたものか、人が食べた経験はあるか
- 組み込まれた遺伝子はどのように働くか
- 組み込んだ遺伝子からできるタンパク質はヒトに有害でないか、アレルギーを起こさないか
- 組み込まれた遺伝子が間接的に作用し、有害物質などを作る可能性はないか
- 食品中の栄養素などが大きく変わらないか
さらに安全性が確認されていないGMフードは市場に出回らないよう輸入時に検査を行っています。日本においてこれらの流通が開始したのは1996年のことですが、そのことによって特定の健康被害が日本国内で急増したという話がメディアで報じられたことはありません。
ただし特定の物質が人に与える健康被害に関しては、急性毒性や慢性毒性など異なる期間で発現するものが存在します。つまり短期被害と長期被害があり、後者に関してはまだ結果が分からないのです。
しかし被害は後から分かったときにはもう手遅れという可能性もあるので、「遺伝子組み換えに対しては予防的な対応が必要」と一部の人たちが主張するのもある意味納得です。
GMフードに関してはまだ歴史が浅いので、その危険性に関しての結論が出るにはまだいくらか時間がかかりそうです。
まとめ
「遺伝子組み換え技術は実際のところどうなんだ。安全なのか?危険なのか?」という声が聞こえてきそうです。
残念ながらその安全性に関しては2017年11月時点では結論が出ておらず、また法律で禁じられていない以上最終的には個人で判断するしかないというのが実情です。ただしメリットがあまりにも巨大なのでGMフードは非常に多く流通しており、実際に日本に輸入される穀類の半数以上はGMフードだとも言われています。

特に意識していないのであれば、あなたの食卓に並んでいる食品もGMフードである可能性が大いにあります。
青汁を購入する際にどうしても避けたいのであれば、国産で有機JASの素材のみを使用している製品を選ぶことをオススメします。