昔は青汁の素材と言えばケールでしたが、最近は必ずしもそうとは言えない状況です。
ケールはアブラナ科でキャベツの原種であり現在でも青汁の原料として使用されますが、最近は大麦若葉、明日葉、桑の葉、クマザサなどの人気が高まっています。
特に大麦若葉の人気には凄まじいものがあります。
そこで今回はケールと大麦若葉を簡単ながら比較してみたいと思います。
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ケールが原料として好まれる理由はその栄養価の高さ
キューサイ青汁CMケールは大麦若葉と並び人気があります。実際にドラッグストアなどで見かける青汁の主要素材は、ほとんどのケースでこれらのうちのどちらかです。
過去に悪役商会で俳優の八名信夫さんが出演していた青汁のコマーシャルで「まずい!もう一杯!」というフレーズがありましたね。30代以上の人なら覚えていると思います。

世間での青汁の認知度を上げることに一役買ったこのコマーシャルですが、あの青汁の原料こそがまさしくケールです。
青汁という飲み物は本来緑黄色野菜から搾り取った液のことなので、材料がケールである絶対的必要性はありません。
緑黄色野菜とは:
原則として可食部100g当たりカロテン含量が600μg以上のもの。
出典:七訂食品成分表2017
ではなぜケールが好まれるかと言うと、それは栄養価が極めて高いからです。
以下にケール青汁100gにおける成分を簡単な表で示します。
エネルギー | 375 kcal | 食物繊維 | 28.0 g |
タンパク質 | 13.8 g | 糖質 | 70.2 g |
脂質 | 4.4 g | 灰分 | 8.6 g |
ビタミン | ミネラル・その他 | ||
β-カロテン | 10000 μg | ナトリウム | 230 mg |
ビタミンB1 | 0.31 mg | カリウム | 2.3 g |
ビタミンB2 | 0.80 mg | カルシウム | 1.2 g |
ビタミンB6 | 0.75 mg | マグネシウム | 210 mg |
ビタミンC | 1.1 g | 鉄 | 2.9 mg |
ビタミンK | 1500 μg | 亜鉛 | 1.8 mg |
葉酸 | 820 μg | マンガン | 2.75 mg |
出典:七訂食品成分表2017
一目瞭然ですね。実に多くの栄養素が豊富に含まれていることが分かります。
簡単に比較すると以下のようになります。
- 食物繊維:ごぼう(5.7g)の約5倍
- β-カロテン:ニンジン(6700μg)の約1.5倍
- ビタミンC:レモン(100mg)の11倍
- 葉酸:ホウレン草(210μg)の約4倍
- カルシウム:牛乳(110mg)の約11倍
- マグネシウム:枝豆(62mg)の約3.4倍
- 鉄:小松菜(2.8mg)の約1.03倍
※可食部生100g
比較対象であるケール青汁と牛乳は飲料であり、それ以外は生の野菜という違いがありますが、それにしてもケールの栄養価があまりに突出しすぎていてにわかに信じられないかもしれません。
ただしこの数値が記載されている食品成分表は文部科学省の「日本食品標準成分表」に準拠しており、日本国内において公式として認められている文書です。
鉄に関してはほんの約1.03倍とほぼ変わらないですが、小松菜は鉄分が豊富なことで名の知れた野菜です。ケールはそれのさらに上を行くのですね。
ちなみに地中海沿岸で栽培されることが多いケールですが、日本人の食卓に上がることがないので栄養ランキングなどで初めから外されてしまうが少し残念です。
隠れた主役、またはラスボスと言ってもいいでしょう。
ケールが「緑黄色野菜の王様」と呼ばれる理由は、他を圧倒するこの栄養価の高さにあります。
ケールに豊富な栄養素7選!その健康効果を知る
「野菜の王様」という立派なニックネームだけが先行している感がありますが、ここでたっぷりと含まれる栄養素とその健康に対してのメリットを簡単にご紹介します。
ケールで知られている栄養分には以下のようなものがあります。
- ビタミンC
- ビタミンE
- 食物繊維
- ルテイン
- カルシウム
- マグネシウム
- トリプトファン(メラトニン)
ひとつずつ分かりやすく説明していきます。
ビタミンC
ビタミンCは美容成分であるコラーゲンの生成に欠かせない物質です。
コラーゲンは細胞と細胞をつなぐ働きのあるタンパク質であり、若さの象徴である皮膚のハリには必要不可欠です。
ビタミンCには肌のシミを防止する作用もあり、いつまでも美しくありたいと考える人にとって極めて重要なビタミンです。
また女性の方が不足しがちな鉄分の吸収率を上げることでも知られています。
ビタミンE
ビタミンは大きく分けると水に溶ける水溶性と、脂に溶ける脂溶性のふたつが存在します。
水溶性の代表がビタミンCであり、脂溶性の代表がビタミンEとなります。
ビタミンEはアンチエイジング効果が有名ですが、それは老化の原因となる活性酸素から細胞膜を守る働きがあるからです。
また個人差はありますが、40歳を過ぎるころから血液中の過酸化脂質量は増加することが知られており、ビタミンEにはこれらを防ぐ効果も確認されています。
「年齢を重ねるごとに重要度が増す成分」ということを覚えておいた方がいいでしょう。
食物繊維
食物繊維は大部分が体内で消化吸収されることなくトイレで排出されてしまうので、過去においては不必要な物質として扱われていました。
ただし腸内をめぐる過程でとても有益な働きをすることが研究により分かってきました。大雑把に分類すると水溶性と不溶性のふたつが存在しますが、それぞれには以下のような作用があります。
- 水溶性食物繊維:腸内善玉菌のエサとなる(腸内環境の改善)
- 不溶性食物繊維:腸のぜん動(伸縮)運動を活性化
一言でいうと整腸効果があるということで、現在では「便秘の解消」というテーマにおいて定番成分として扱われます。
お通じの悪さに悩まされている人には要チェックの成分です。
ルテイン
一日中パソコンやスマートフォンを利用していると目に疲れが蓄積しますが、そのような場合にルテインはとても重要となる栄養素です。
この成分はカルテノイドと呼ばれる天然色素の一種であり、黄斑(おうはん)部と呼ばれる眼の網膜に多く存在します。
黄斑部は視力や色覚など人の視覚機能において大きな役割を果たす場所です。
目の中に存在するルテインは現代の生活では切っても切り離せないパソコンなどから発せられるブルーライトなどの光を吸収し、これらから発生する活性酸素を除去する働きがあります。
このように目の健康には欠かせない成分ですが、体内で合成することができないので食事から摂取する必要があります。
カルシウム
カルシウムが重要な成分であることは誰もが知っているでしょう。
残念なことに日本人が不足している栄養素としては常に挙げられるものでもあります。
ケールが他の植物と比べ多くのカルシウムを含んでいることはよく知られていますが、その量は牛乳の約2倍です。
人の体内のカルシウムは99%が骨や歯の中ですが、実は残りの1%は血液中に存在し神経興奮の抑制などの働きがあります。
イライラしている人に対して「カルシウムが足りない」などと言ったりするのはこれが理由です。
骨や歯を強くし情緒を安定させるなど、健全な社会生活にカルシウムは必須なのです。
マグネシウム
マグネシウムはカルシウムやリンとともに骨を作るミネラルです。
骨の強化のみだけではなく、血流を良くしたり血圧を安定化したりと様々な作用が確認されています。
現代の日本人の食生活では不足しやすい物質として扱われており、実際に体内量が少なくなると記憶力など脳の働きに障害が発生します。
また貧血と同様に体が疲れやすくなるなどの症状も報告されています。
あまり注目されるタイプの栄養素ではありませんが、不足状態を放置しておくと様々な体の不調が表面化するので注意が必要です。
トリプトファン(メラトニン)
メラトニンは睡眠を促すホルモンです。
生活習慣が定まらないと睡眠障害を引き起こすことがありますが、これは多くのケースでメラトニンの分泌量減少が原因です。
「ケールにはメラトニンが豊富」などと言われることがありますが、正確には必須アミノ酸であるトリプトファンが多く含まれるのです。
体内に取り込まれたトリプトファンはセロトニンという脳内物質の材料となります。
セロトニンは日中に発生されるホルモンですが、この生成が正常に行われることが夜間のメラトニン分泌を促すことになるのです。
「夜になかなか寝付くことができない」や「朝スッキリと目覚めることができない」など、現代にありがちな睡眠障害を抱えている人にとってメラトニンはとても重要です。
そしてその分泌に欠かせないのがトリプトファンであり、ケールはそれを多く含んでいるのです。
規則正しい生活を目指している人にとってケールはとても頼もしい植物と言えるでしょう。
ケールが大麦若葉に負けた2つの理由
ケールが大麦若葉に青汁素材の王者としての地位を奪われた理由は以下の2つです。
- 大麦若葉のほうが飲みやすい
- 大麦若葉の栄養素はケールと肩を並べる
ひとつずつ簡単に説明していきます。
大麦若葉のほうが飲みやすい

ケール青汁がマズというのはよく知られた話です。
商品にもよりますが多くは雑草感が漂っていて、人によってはかなり抵抗があると思います。それと比べ大麦若葉が原料の青汁は割とさっぱりとした味になっています。
青汁には健康効果があるといっても、1日2日で恩恵が得られるようなものではありません。ある程度の期間続けることにより、その効果・効能が表に出てくるものなのです。
つまり飲み続けることが大前提となりますが、お世辞にも美味しいとは言えないような飲み物は商品としては敬遠されてしまいます。
これが大麦若葉がケールに代わり原料として台頭してきた大きな理由です。
大麦若葉の栄養価はケールと肩を並べる
大麦若葉の青汁は文部科学省が編纂している七訂食品成分表2017に記載がないので、代わりに山本漢方製薬が販売している大麦若葉とケール粉末3%の成分表を比較したものを挙げます。
山本漢方が販売を手がける両青汁は添加物や甘味料などを含まない100%純正品なので、これら植物の栄養分を見る上でいい参考になります。

まずはじめに大麦若葉とケール双方の、そのとてつもない栄養成分の数に驚かされると思います。
ケールの栄養素の多くは大麦若葉にも含まれていることが確認できますね。
さらに個々を比較していくと、食物繊維、鉄、ビタミンE、グルタミン酸などよく耳にするタイプの成分で大麦若葉が上回っています。
このようにケールに負けず劣らずの栄養価を誇り、プラスアルファとして味もマイルドで飲みやすいとなると、これはもう生産者側が放ってはおきません。
大麦若葉が人気を博すのは自然の成り行きでしょう。
ケールの強みはその圧倒的なカルシウム量
「じゃあ青汁は大麦若葉のものを飲めばいいんだな!」と単純に考えてはいけません。物事はそこまでシンプルではありません。ケールにはケールの良さがあります。
大麦若葉と比較をすると、ビタミンC、マグネシウム、カルシウムなどでケールは優位に立ちます。特にカルシウムの量は他の野菜と比べてもケールが突出しています。
実際に上で示した山本漢方製薬の比較画像においても、ケールのカルシウム量は大麦若葉の8倍以上です。
日本の食卓によく上がる、カルシウムが豊富な小松菜とチンゲンサイ(可食部 生100g)と比較すると一目瞭然です。
出典:七訂食品成分表2017
グラフにすると分かりやすいですね。ケールのカルシウム量は小松菜の約1.3倍、チンゲンサイの2.2倍です。
日ごろ乳製品を摂らずカルシウム不足を実感している人には大麦若葉ではなくケールを原料とした青汁をオススメします。
またケールと大麦若葉にはそれぞれの長所があるので、朝は大麦若葉、夜はケールなどと両方飲むという方法もあります。
一部の青汁ファンの中には、より味のキツいケールを好むという人たちまでいます。
青汁により健康体をゲットしたい人は、自身が抱えている健康不安やそれに伴い摂取したい栄養素などをしっかりと見極めることから始めましょう。