あなたは有機JASという言葉を聞いたことがありますか?
「聞いたことはあるけど内容までは知らない」という人が多いのではないでしょうか。
そのようなあなたのために、ごく簡単に有機JASの説明をします。
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有機は生物で、無機は無生物
有機とは聞きなれない言葉ですが、有機栽培という言葉は聞いたことがあるかもしれません。
オーガニック栽培とも言います。
日本国内での有機栽培の普及を目指し、1993年に日本オーガニック&ナチュラルフーズ協会という組織が設立されています。
そのホームページに記載されている有機栽培の定義が以下です。
農薬や化学肥料に頼らず、太陽・水・土地・そこに生物など自然の恵みを生かした農林水産業や加工方法をさします。

つまり有機栽培とは、「野菜を栽培する際に、農薬や化学肥料を使用せず天然の肥料などで育てる方法」です。
一般的には以下のようなことが禁止されています。
- 化学農薬
- 化成肥料
- 環境ホルモン
- 遺伝子組み換え技術
「有機と無機とはなんだ?なんでそういう名称?」という疑問が浮かぶかもしれません。辞書の定義を引用すると以下のようになります。
ゆう‐き〔イウ‐〕【有機】 の意味
1 生命力を有すること。生活機能を有すること。
2 有機物の性質をもつこと。
3 「有機化合物」「有機化学」などの略。⇔無機。出典:goo 辞書
有機とはつまり「生きている」という意味です。この栽培方法では天然の肥料などとともに土壌に生息する微生物など、自然の力も利用するのです。
農薬は生物ではありませんね?よって無機質であり、使用した時点で有機栽培とは言えません。
- 化学農薬を使用しない栽培方法のこと
農薬の役割は害虫退治と雑草対応の2つ
農薬を使用する理由は大雑把に分けると以下のふたつです。
- 害虫を退治する
- 雑草を枯らせる
農薬を使用せずに自然栽培をすると、害虫のせいで野菜が穴だらけになります。自宅の畑で野菜を育てたことのある人なら経験があるでしょう。
「雑草を枯らせる」というのは、雑草が土の栄養を奪ってしまうという事とともに害虫が繁殖してしまうからです。

農薬を使用することで虫などが寄り付かなくなり、結果として作物の生産量が増加するのです。
これだけを聞くと農薬にはメリットが多いように感じますが、デメリットも指摘されています。いわゆる残留農薬の問題です。
残留農薬の基準値は超明快・・・というわけではない
残留農薬に関しては、厚生労働省のホームページに以下の記載があります。
食品中に残留する農薬などが、人の健康に害を及ぼすことのないよう、厚生労働省は、全ての農薬、飼料添加物、動物用医薬品について、残留基準を設定しています。
残留基準は、食品安全委員会が人が摂取しても安全と評価した量の範囲で、食品ごとに設定されています。農薬などが、基準値を超えて残留する食品の販売、輸入などは、食品衛生法により、禁止されています(いわゆる「ポジティブリスト制度」)。
農薬が基準を超えて残留することのないよう、農林水産省が、残留基準に沿って、農薬取締法により使用基準を設定しています。
また、食品の輸入時には、検疫所において、残留農薬の検査等を行っています。
簡単に言ってしまうと、「厚生労働省が食品衛生法で残留農薬基準を定めており、個々の食品の検査などを実施している」ということです。
検査をしているくらいなので「残留基準を上回っている食品を食べると危険」と受け取ることができますが、農林水産省の見解ではそこのところの表現が明確ではありません。
農林水産省が公表している資料を元にすると、残留農薬問題を語る上では以下のキーワードがポイントになります。
- 残留基準値
- 一日許容摂取量
「一日許容摂取量」を元に「残留基準値」が設定されるということを覚えておいてください。
「一日許容摂取量」とは、毎日一生摂り続けても健康に影響がないと考えられる一日の量です。
そして実際の設定方法は以下です。
- 予定している方法で農薬を使い、どれほどが収穫時に残留するかを試験で確認
- その結果に基づき、その農作物から摂取する一人一日あたりの農薬量を推定
- 各農作物の推定を行い、人が全ての食品から一日に摂取する全農薬量を計算
- その量が「一日許容摂取量」の80%以下ならば、農作物に残留すると推定した農薬の濃度を「残留基準値」とする
若干ややこしいですね。ここは簡単に以下のように考えてください。
②全ての農作物にそれぞれ農薬を使ってみる
③それら農作物の残留農薬量を試験してみる
④その結果に基づき、人がそれら複数の農作物を食べることにより一日で摂取する農薬合計量を計算する
➄その合計量が75だった!
⑥一日許容摂取量(100)の80%以下なので、農作物に使用した農薬の濃度を残留基準値に設定
なぜ80%以下かと言うと、農薬の成分を大気や飲料水からも摂る可能性があるからです。
ちなみに80%を超えた場合は、使用してもよい農作物の種類を減らしたり使い方を変えるなどして、人が摂取すると考えられる農薬の有効成分量が80%を超えないよう調整をします。
「残留基準を上回っている食品を食べると危ないのか?」という疑問に関してですが、それについては農林水産省が以下のような見解を公表しています。
残留基準値は農薬が適切に使われたかどうかを確かめるための基準です。
ですから、残留基準値を超えた食品を食べたとしても、1日で摂った農薬の量が「一日許容摂取量」を超えるとは限りません。
また、たとえ「一日許容摂取量」を超える量の農薬を短期間とったとしても、「一日許容摂取量」を超える量を、一生の間毎日、とり続けるということは考えにくいので、健康への悪影響が起こる可能性は極めて低いと考えられます。
以上を軽い口調で言うと以下のようになります。

楽観的と言われれば、そのようにも受け取れます。
農薬は無害ではありません。ただし作物の中の含有量は少量なので、「人に対する有毒性は極めて低い」と理解していいでしょう。
そして、「含有量が上回ってしまった場合は、また下回るように調整しましょうね」というお話です。
有機栽培でも農薬使用は認められている
実は有機栽培は完全な無農薬ではありません。上の動画は1分程度のものですが、これを観ると一番分かりやすいでしょう。
有機栽培の細かい定義を簡単にリスト化すると、以下のようになります。
- 化学的に合成された肥料や農薬の使用を避ける
- 堆肥などの有機質肥料で土づくりを行った田畑などで栽培
- 緊急の場合のみ指定された化学農薬に限って使用可能
一番最後の項目が意外ですね。
作物に重大な損害が発生する恐れがあり化学農薬でしか解決できない緊急の場合は、指定されたものに限って使用が認められているのです。
例えば以下のような農薬が使用を認められています。
- デンプン水和剤
- 硫黄粉剤
- ケイソウ土粉剤
「これじゃあ無農薬じゃないじゃん!」と思いましたか?実は「無農薬野菜」という言葉は使用が禁止されています。
平成15年5月改正前のガイドラインの表示に使われてきた「無農薬」の表示は、生産者にとっては、「当該農産物の生産過程等において農薬を使用しない栽培方法により生産された農産物」を指す表示でしたが、この表示から消費者が受け取るイメージは「土壌に残留した農薬や周辺ほ場から飛散した農薬を含め、一切の残留農薬を含まない農産物」と受け取られており、優良誤認を招いておりました(無化学肥料も同様です。)。
つまり「無農薬野菜だと消費者に誤解を与えるのでやめましょう」という話です。
そしてこのような有機栽培のルールを守った農産物だけが有機JASの認定を受けることができます。
有機JASは消費者に統一的な基準を示すもの

有機JASの存在意義を一言でいうと「消費者側に統一的な基準を示すため」です。

「うちは有機栽培ですよ!」と個々の農家が叫んだところで誰も信用しませんね。また一定の基準が存在しないと、なんでもかんでも有機栽培と宣伝されてしまう恐れがあります。
そこで農林水産省が有機栽培に関してのガイドラインを作成し、それに通りはじめて世間に認めてもらえるわけです。それこそが「有機JAS」です。
つまり有機栽培をしていることに対しての国家からの正式な認定です。
有機栽培のメリットとデメリット
有機栽培のメリットとデメリットを簡単にまとめると以下のようになります。
-
メリット
- 味が美味しく栄養価が高い
- 安全性が高い
- 一般的に価格が高い
- 野菜の形が不揃い
デメリット
「味が美味しい」理由は、人為的な薬品が混入していないので野菜本来の味が引き立つからです。
また作物は害虫から自らの身を守るため、抗酸化物質をたくさん蓄えます。私たちがそれら作物を食べることで体内の活性酸素が除去されアンチエイジングにつながります。
また放射性物質や遺伝子組み換え技術が使われてないので、一般的に安全だと言われています。
遺伝子組み換えが人体にとって本当に有害かどうかの結論はまだ出ていない状況です。
デメリットとしてよく話題に挙げられるのは「値段が高い」ということです。

理由は簡単。自然栽培は害虫対策に多くの手間がかかるからです。つまりそれだけ人が間近でそれら作物を見守る必要があり、その分栽培できる量が限られコストが上がってしまうのです。
結果として農薬を使用している野菜と比べ30%ほど割高になってしまいます。
また有機栽培の作物には形が不揃いなものが多いですが、これは見た目がどうこうというより包丁で切るときに少し厄介ですね。
有機JASは信頼感が高いので、食の安全が気になる人は青汁を購入する際もその認定を受けた製品から選択するといいでしょう。